トラウマ焦点化治療(PTSDの治療)は
侵入症状:
トラウマとなった嫌な出来事に関する記憶が突然よみがえってきたり(フラッシュバック)、悪夢として繰り返される症状。
まるで実際に出来事が起こっているかのようにリアルで、発汗や心拍の上昇などの生理的な反応も生じます。
回避症状:
トラウマとなった出来事を思い出すことや話すことを避ける症状。
トラウマ記憶の引き金となる人、物、状況なども避けることが多いです。
過覚醒:
ちょっとしたことでイライラしやすくなったり、ビクビクしやすくなったり、眠れなくなる症状。
周囲からすれば無謀で自己破壊的と感じられる行動をとりやすくなります。
気分や考え方のネガティブな変化:
「世界は危険だ」「他人は信用できない」「自分が悪い」など、ものの見方や考え方が極端に変化する症状。
興味や意欲が減退し、トラウマを経験する前に楽しめていたことも楽しめなくなります。
PTSDの回復が難しい理由
「回避症状」「気分や考え方のネガティブな変化」が、回復をさまたげる悪循環をつくっていると考えられています。
回避症状によって束の間の安心感が得られるのと引き換えに、本来安全なものに対しても不安や恐怖の反応が続いてしまいます。避ければ避けるほど、危険なものは危険に見えてきて、行動が受け身的になればなるほど自信が失われていきます。
ものの見方がネガティブに偏ることで、ポジティブな情報に注意が向かなくなります。不安が増し、自信が失われ、よりいっそう避けたい気持ちが高まります。
これらふたつの症状が互いを強めて維持してしまうと、出口の見えない悪循環が続いてしまいます。
持続エクスポージャー療法(PE療法)
概要:
持続エクスポージャー療法(Prolonged Exposure Therapy)は、PTSD治療ガイドラインの第一選択として挙げられている治療法で、PTSD治療効果が最も高い治療法のひとつです。
この治療では主にふたつの課題に取り組みます。
1.生活のなかで避けているものに向き合う(実生活内曝露)
トラウマ体験のあとから避けるようになってしまった、本来は安全で、頭では安全だとわかっているはずの物・人・活動に少しずつ触れていってもらいます。はじめのうちは体が危険だと警告してドキドキしますが、繰り返し触れるにしたがって不安の反応が小さくなります。それまで制限されていた生活の幅を取り戻すことができます。
2.トラウマ記憶に向き合う(イメージ暴露)
トラウマ体トラウマとなった出来事の記憶は通常の記憶と異なる記憶として保存されています。例えれば凍結されていて、消化が進んでいない状態です。トラウマ記憶を通常の記憶として消化していくために、あえてトラウマとなった記憶に触れる、その出来事を話すことを繰り返してもらいます。この作業をすることで、トラウマ記憶も通常の記憶と同じように記憶の引き出しに収められて、症状や悪夢として現れなくなります。また、世界や自分自身に対する見方も回復していきます。
これらの課題は無理のないペースで、カウンセラーと一緒に計画的に進めていきます。PE療法は決して楽ではない勇気の要る治療ですが、安全で効果の高い治療法です。トラウマ体験によって失われた生活を取り戻すこと、それまで持っていた世界や自分自身に対するイメージを取り戻すことを助けます。
実施条件:
対象は18歳以上、PTSDの診断基準を満たしている方です。
精神科・心療内科に通院中の方は主医師と相談してください。
原則週1回、1回90分間の面接を10回程度行います。
オンラインではなく対面で行います。
はじめ1~2回の面接でPE療法適応可否の判断を行います。病状や安全性を鑑みて、すぐにPE療法を行うことができない場合もあり得ることをご了承ください。